コラム

事業再構築補助金について徹底解説!

このページでは、事業再構築補助金について、ポイントごとにわかりやすく説明していきます。
事業再構築補助金は、経済産業省内の中小企業庁が令和3年度に新たに設けた補助金制度です。

新型コロナウイルス感染症拡大により売り上げが下がるなどの影響を受ける中、自社の強みを活かして新たなチャレンジに取り組む事業者を支援することが補助金交付の主な趣旨です。

補助金全体の予算規模はなんと1兆1485億円

既存のものづくり補助金などの予算規模が1000億円ほどになるので、約10倍の予算が使用される他に類を見ない超大型補助金といえるでしょう。

採択されると最小100万円~最大1億円の大きな金額を受け取ることができます。
採択予定数も55,000件と多いので、新型コロナウイルス感染症で事業に影響を受けた企業や事業主の方は、ぜひとも申請しておきたい補助金となっています。

事業再構築補助金の補助金額と補助率

補助金額補助率補足
中小企業(通常枠)100万円以上6,000万円以下2/3
中小企業(卒業枠)6,000万円超~1億円以下2/3400社限定
中堅企業(通常枠)100万円以上8,000万円以下1/2※4,000万超は1/3
中堅企業(V字回復枠)8,000万円超~1億円以下1/2100社限定

補助金を申請できる事業者は中小企業・中堅企業であることがまず第1の条件です。
資本金10億円以上の大企業は補助対象となりません。

中小企業の中に個人事業主・フリーランスも含まれるので個人の方も申請が可能です。
補助金に採択された場合の金額と補助率は以下の通りです。

中小企業の補助金額と補助率

補助額補助率
通常枠100万~6,000万円2/3
卒業枠6,000万円超~1億円2/3

卒業枠とは、事業再構築をきっかけに、中小企業から中堅企業に成長することを目指す企業向けの400社限定の特別支援枠です。
補助金交付後、約3~5年のフォローアップ期間に中小企業を卒業することが交付条件となっています。
事業計画期間終了時点で、正当な理由なく中堅・大企業になれていなかった場合は、通常枠との差額分(最大4000万円)は返納しなければいけないなど、申請ハードルは高めです。

中堅企業の補助金額と補助率

補助額補助率
通常枠100万~8,000万円1/2
※4,000万超は1/3
グローバルV字回復枠8,000万円超~1億円1/2

グローバルV字回復枠とは、以下のすべての要件を満たす中小企業向けの100社限定の特別支援枠です。

  • 2020年10月以降の連続する6か月間のうち任意の3か月の合計売上高がコロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して、15%以上減少している中堅企業。
  • 補助事業終了後3~5年で付加価値額又は従業員一人当たり付加価値額の年率5.0%以上増加を達成を見込む事業計画を策定すること。
  • グローバル展開を果たす事業であること。

こちらも卒業枠と同様に、所定条件を達成できなかった場合は差額最大2,000万円の返納義務が発生します。

事業再構築補助金の補助金申請に必要な3つの要件

中小企業・中堅企業の事業者は以下の3つの要件を満たすことで補助金を申請することができます。

1.新型コロナウイルス感染症の影響で売り上げが減っている

2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年または2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していることが条件です。

任意の3か月は対象期間内で好きな月を選ぶことができ、連続していなくても大丈夫です。
例えば2020年の11月、2月、3月を選んだ場合、2019年の11月、2月、3月と比較して売り上げが10%以上減少していれば条件クリアです。

2.新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編に取り組む

経済産業省が示す「事業再構築指針」に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編に取り組む必要があります。
経済産業省が「事業再構築指針」と「事業再構築指針の手引き」の2つの資料をウェブで公開しているのでダウンロードして読んでみましょう。

事業再構築指針→https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/shishin.pdf
事業再構築指針の手引き→https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/shishin_tebiki.pdf

「事業再構築指針」だけではわかりづらい部分も多いので、新分野展開などのそれぞれの類型別に詳しく説明してくれている「事業再構築指針の手引き」をメインに参考にするのがおすすめです。

3.認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する

2点目の事業再構築への取り組むことを証明するため、「事業再構築指針」に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編のいずれかが組み込まれた3~5年の事業計画書の提出が必要です。

内容に関しても、事業終了後3~5年で、付加価値額(利益)の年率平均3.0%以上、または従業員一人当たりの付加価値額の年率平均3.0%以上の増加を見込める事業計画をたてることが義務付けられています。

この事業計画書は、認定経営革新等支援機関と共同で策定することが必須条件となります。

補助金額が3,000万円を超える案件は金融機関(銀行、信金、ファンド等)も参加して策定しなければなりません。金融機関が認定経営革新等支援機関を兼ねる場合は、金融機関のみでOKです。

どう事業再構築していくのかの具体的な事業計画書を認定支援機関と協力して作る必要がある、ということですね。
3つ目が事業再構築補助金最大のポイントであり、申請で1番大変な部分だと思います。

認定支援機関との共同策定も必須条件となっているので、申請準備を始める方はまずは協力してくれる認定支援機関を探すところからはじめましょう。

事業再構築補助金申請に必要な認定支援機関ってなに?

事業再駆逐補助金の申請に必要な事業計画書の作成にあたり、必須要件となる認定支援機関との共同策定。

認定支援機関は、中小企業の経営に関する相談などの支援事業を行う、国の認めた指定機関を指します。

地域の商工会、商工会議所の経営指導員、地方銀行や信用金庫の税理士、行政書士、などが認定支援機関として認められています。

経営状況の把握から事業計画書作成、さらに採択後の事業計画の実行に至るまで、事業者とバディとなってサポートしてくれるのが認定支援機関の役割なのです。

身近なところだと、地元の商工会、地方銀行などに相談に行けばまず間違いなく認定支援機関を紹介してもらえます。
より具体的に、戦略的なアドバイスを受けたい方は認定支援機関の登録を持つ経営コンサルタントなどに相談するのも良いかもしれません。

普段から書類作成などを頼んでいる担当税理士などがいる事業者は、税理士さんに相談してみるのもいいでしょう。

いずれにせよ、何らかの認定支援機関との協力が必須となり、事業者単独での申請は受理されません。
事業採択補助金を申請する場合は、まずはじめに認定支援機関を探すことからはじめましょう。

事業再構築補助金の緊急事態宣言特別枠ってなに?

2020年の国による緊急事態宣言発令により売り上げが大きく下がるなど、深刻な影響を受けた飲食サービス業、宿泊業などをはじめとした中小企業・中堅企業については、さらに補助率の高い「緊急事態宣言特別枠」が用意されています。

特別枠の対象事業者

  • 通常枠の申請要件を満たしていること
  • 緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等により影響を受けたことにより、令和3年1〜6月のいずれかの月の売上高が対前年または前々年の同月比で30%以上減少している事業者

以上2点の条件に合致すれば、地域や業種などに関わらず特別枠に申請可能です。
通常枠が売り上げ10%以上減少が条件なのに対し、特別枠は30%以上減少していることが条件となっていることからも、より困っている、緊急性の高い人向けの申請枠となっています。

特別枠の補助額と補助率

従業員数に応じて補助額が分かれています。
補助率は中小企業は対象経費の3/4、中堅企業は対象経費の2/3です。

従業員数補助額
5人以下100万~500万円
6人~20人100万~1,000万円
21人以上100万~1,500万円

また、特別枠で申請して不採択になった場合は、そのまま通常枠においても審査され、かつ一定の加点措置を受けられます。
つまり、特別枠で採択されなかった場合も、通常枠で採択される可能性があるということになります。
補助率も高く、審査における加点などの優遇措置も受けられるので、条件を満たす事業者はまずは特別枠で申請してみましょう。

もちろん特別枠においても個人事業主の方も申請可能なので、飲食店経営などされている個人事業主の方はぜひ特別枠にチャレンジしてみて下さい。

事業再構築補助金の公募要領

補助金の申請をするにあたって、まず読まなければいけないのが公募要領です。
事業再構築補助金の公式HPからダウンロードすることができます。

公募要領(第2回)→https://jigyou-saikouchiku.jp/pdf/koubo001.pdf

公募要領は公募ごとに改定される場合があるため、自分が申請する回の公募要領を必ず読みましょう
第1回で申請して、第3回でも申請する場合は、第3回の公募要領を読み直しましょう。

対象事業者や対象経費など、公募要領内に申請に必要なすべての情報がのっています。
お役所書類なので正直分かりにくい部分もあるのですが、まずは一度通して読んでみましょう。

分からない箇所が出てきたら協力してくれる認定支援機関に聞いてみるのもいいと思います。
とにかく自分で読んで、分かる・分からないを判断することが大事です。

事業再構築補助金は電子申請オンリー!あらかじめGビズIDを取得しておこう

事業再構築補助金は電子申請のみでの受付となります。
電子申請にあたり、「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要になります。

GビズIDは、一つのアカウントで複数の行政サービスにアクセスできる、法人・個人事業主向け認証システムです。
IDの取得には印鑑証明書・印鑑登録証明書の提出が必要です。

また、GビズIDは申請から取得まで2~3週間かかるので要注意。
補助金の電子申請前にGビズIDを取得しておく必要があるので、余裕をもってID取得準備を進めましょう。

GビズIDプライムアカウントの発行手続きはこちらから可能です↓
https://gbiz-id.go.jp

事業再構築補助金は個人事業主でも申請できる?

事業再構築補助金は個人事業主も申請対象となっています。

補助金の公募要領の補助対象者の項目で、中小企業者の定義として「会社または個人であること」と明記されています。
そもそも、事業再構築補助金は飲食店をはじめとした、コロナ禍で打撃を受けた業界の救済措置の役割も大きいため、店舗の個人経営などの事業者が対象にならないと元も子もありません。

個人事業主の場合であっても、法人と同様に上の3つの要件を満たすことが申請に必要になります。

事業再構築補助金の公募期間はいつからいつまで?

事業再構築補助金は2021年度以内に5回の公募を予定しています。
すでに第1回と第2回の公募期間は終了しており、今後申請を出す方は第3回以降で申請を出す必要があります。

参考までに第2回の公募スケジュールはこんな日程でした。

公募開始:令和3年5月20日(木) 18:00
申請受付:令和3年5月26日(水)
応募締め切り:令和3年7月2日(金) 18:00

第3回は7月下旬ごろから公募を開始予定と公式HPに記載が出ています。
公募期間の詳細はまだ発表されていないので、申請予定の方は公式HPからの追加発表をチェックしておきましょう。

事業再構築補助金は一度不採択になっても次回以降の公募で再申請ができるのが特徴です。

もし第1回、第2回の申請で不採択となってしまっても、申請内容を見直して再申請することで採択されるチャンスが残っています。
第1回の公募はすでに採択結果が発表されています。第2回の採択発表は8月下旬~9月上旬頃の予定だそうです。

不採択になってしまった方もあきらめずに、第3回以降の公募期間に間に合うよう準備をしておきましょう。

事業再構築補助金第1回公募の採択結果が発表!傾向と対策など分析

2021年6月に、早くも事業再構築補助金第1回公募の採択結果が発表されました。
採択結果については、事業再構築補助金事務局が、詳細なデータをウェブ上にて公開してくれています。

第1回公募結果→https://jigyou-saikouchiku.jp/pdf/result/koubo_kekka_gaiyou01.pdf

事務局からの資料を参考に、採択率や申請内容の傾向などについて解説していきます。

第1回公募の応募件数と採択結果

第1回公募の応募件数はすべての枠を合わせて22,231件でした。
そのうち申請要件を満たして審査段階に進めたのは19,239件、その中から8,016件が採択されました。

気を付けて見ていきたいのは申請要件を満たせずに審査対象外となってしまった応募が2,992件あるというところです。割合でいうと応募件数全体の14%が審査すらしてもらえていないことになります。

審査段階に進めた件数と採択件数の割合で見ると採択率は約4割となっています。
つまり審査に進むことができれば4割の確率で採択されるということで、これは倍率としてはなかなか高いのではないでしょうか。

手間をかけて作成した事業計画書も、審査要件を満たせていないと見てもらうこともできません。
これはとってももったいないので、今後申請を出す方は公募要領をよく読み込み、審査要件を今一度確認しておきましょう。
認定支援機関にも申請内容をチェックしてもらいましょう。

申請者の内訳は?

申請された業種の中で特に多かったのが、製造業、宿泊業、飲食サービス業、卸売・小売業で、全体の6割をこちらの業種からの申請が占めていたそうです。
コロナ禍で打撃を受けたライブハウスなどの娯楽サービス業からの申請も多かったようです。

協力した認定支援機関は、金融機関が最も多く約8,100社、続いて税理士関係が約5,600社、商工会・商工会議所が約3,500社程度となっています。
また、中小企業診断士、民間コンサル、地銀などの金融機関の認定支援機関と策定した申請の採択率が高い傾向にありました。

補助金額が3,000万円以上を超える場合は、金融機関との事業計画書策定が必須となっているのもあり、金融機関を認定支援機関に選んだ事業者が多かったのかもしれませんね。

事業計画書の傾向と今後の対策

事業計画に関して見ていくと、製造業は設備投資、飲食業はデリバリー業やセントラルキッチンの導入事業などが多かったようです。
また、顧客規模がわからないため投資対効果が測れない事業計画書が8割ほどあったというのが第1回公募の大きな課題のようでした。
その事業をすることで、なぜ売り上げが増えるのか、の根拠が弱い事業計画書が多かったそうです。

第1回公募の結果を受けて、事業計画書に明確に書いておいてほしいことは以下の2つだと中小企業庁が明言しています。

  • 「今までどのような事業」をやっていて「新事業でなにをするのか」
  • 「なぜその新事業を選択」するのか


補助金を払う価値が事業計画にあるのかどうかを、とにかく具体的に書くことが重要みたいです。

飲食店で、デリバリー業をはじめるから100万円が必要です!という内容だけではだめで、補助金100万円を〇〇に活用することでデリバリーの予約が▲件増えて、利益が□□円増えます!のような具体的な数値にまで落とし込んだ事業計画書が評価されるようです。

今回の事業再構築補助金は、持続化給付金のように、経営維持のみを目的としているわけではなく、中小企業に新しいことにチャレンジして成長してほしい!という大きな目的を掲げています。
おそらく事務局は、具体的な事業計画書を作成する過程も合わせて、中小企業の成長につながることを期待しているのではないでしょうか。

事業計画書に書いた数値通りに事業を実現させないとダメ!と言っているわけではありません。
実際に、卒業枠やV字回復枠でなければ、一度採択された補助金の返納義務などはないわけです。

なので、大変だとは思いますが具体的な数値にまで落とし込んだ事業計画書の作成にチャレンジしてみましょう!
現状8割の事業計画書がそこを満たせてないわけですから、具体的な事業計画を書けるだけで採択率はグッと上がるはずです。

まとめ

  • 補助金の対象は中小企業・中堅企業個人事業主ももちろん対象!
  • 申請要件1:新型コロナウイルス感染症の影響で売り上げが減っていること
  • 申請要件2:新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編に取り組むこと
  • 申請要件3:認定経営革新等支援機関と事業計画を策定すること
  • 電子申請での受付。事前にGビズIDプライムアカウントの取得が必要
  • まず最初にやることはGビズIDプライムアカウントの取得と認定支援機関への相談
  • 一度不採択になっても次回以降の公募で再申請可能
  • 事業計画書は「具体的」に根拠を明確にして書くのがポイント

事業再構築補助金の概要についてまとめてみました。
事業再構築補助金は、事業計画書の作成など申請準備は大変ですが、採択されればもらえる補助金の額も大きいのが特徴。

補助金をもらうことも大事ですが、経営のプロである認定支援機関と協力し合いながら事業計画書を作成することは事業を続けるにあたってとても役に立つと思います。

対象企業や個人事業主の方は、ぜひこの機会に事業再構築補助金の申請にチャレンジしてみてください。